打撲の原因・症状・応急処置について

    打撲とは、転んだりぶつけたりすることが原因で発生する怪我の呼称です。一般に打ち身とも呼ばれています。

    患部に強い衝撃が加わることで起こる損傷で、コンタクトスポーツによる接触や転倒により起きます。

    打撲は皮膚の表面だけが傷付いているのではなく、さらにその奥の皮下脂肪や筋肉、細い血管が損傷することがあります。

    打撲の代表的な症状は腫れや熱感、内出血、押すと感じる強い痛みがあります。

    受傷直後より、時間の経過とともに腫れや内出血が徐々に出てきます。

    部位別の症状

    手足の打撲

    転倒時に手の平をついて負傷した場合、TFCC損傷の合併が考えられます。

    TFCCとは三角繊維軟骨複合体の事で前腕骨の橈骨と尺骨で作られる関節(遠位橈尺関節)を安定させている靭帯と軟骨の支持組織です。

     遠位橈尺関節は手関節とともに手首を捻る動作の安定の役割を担っています。

    このTFCCが損傷することで、雑巾を絞るような動きや、腕立て伏せのように手をついて体重がかかる動作で尺骨側に痛みを引き起こします。

    足首の打撲

    サッカーでの接触プレーで相手選手の足がぶつかり負傷する事があります。

    症状は一般的な打撲と同じで腫脹、熱感、内出血、圧痛です。

    特にスネの骨の打撲は『弁慶の泣き所』と呼ばれ、かなり痛みを伴います。階段を登る時に踏み外してスネをぶつけてしまった際が多く見られます。

    かなり痛みが強いですが、打撲ですので初期の治療を行えば改善されます。足をついただけでもスネに激痛が走るようでしたら骨損傷の可能性もありますから、一度整形外科でレントゲン撮影をお願いします。

    頭部の打撲

    スポーツの現場ではラクビーのタックルで頭部をぶつける、サッカーのヘディングで相手の頭とぶつかることで発生することが多いです。日常では転倒して頭部を床に打ち付けてしまう事が多くみられます。

    通常、たんこぶが出来て、少しずつ改善されていきますが、注意していただきたいのが頭部を打撲したことによる下記の症状です。

    症状名解説
    脳震盪(のうしんとう)脳震盪を起こすと、ボーとする、気持ち悪さ、一時的な記憶の喪失、異常行動がみられます。受傷後24時間は患者さんを1人にせず、誰か見守るようにしてください。
    急性硬膜外血腫頭蓋骨と硬膜内側で脳を包んでいる硬膜の間に出血がたまってできる血腫。
    頭蓋骨の内側の圧が高まり頭蓋内圧亢進を引き起こす、激しい頭痛、嘔吐があらわれます。血腫が増大すれば、意識障害を起こすこともあります。
    急性硬膜下血腫頭部外傷により脳のくも膜に脳挫傷が起こり、その部分の血管が損傷されて出血し、短時間で硬膜下にたまってできる血腫です。受傷直後に意識障害を起こす場合や受傷後、徐々に意識が悪くなる方もいます。
    慢性硬膜下血腫頭部外傷により、通常で2週間から3カ月の期間に硬膜の下に徐々に血腫ができます。高齢者の方に多く、頭痛や歩行障害、麻痺が起きます。受傷直後でなく、2週間から長いと3か月程経過して発症します。

    脳血管の損傷は脳神経外科の適用で整骨院や整形外科では対応出来ません。

    頭部を打撲した際は必ず、専門医を受診して下さい。

    首の打撲

    臨床上、首の打撲は経験がありません。もしあるとすれば格闘技等で直接首への外力が加わったケースなどが考えられます。

    背中

    床が濡れていて、足を滑らせ背中を打ち付けた際に発生します。肋骨の下には肺がありますので、強く付けると一時的に呼吸困難になります。

    受傷後に息を吸う時、咳で痛みが出る場合や体を捻る時に痛みがある場合は肋骨骨折が考えられます。

    肋骨骨折は骨の転移がほとんどなく、バンドを巻いておく程度で2ヶ月程で骨は癒合します。

    胸部

    心臓震盪とは少年野球の捕球時やサッカーのトラップ時に胸部に衝撃が加わる事で心疾患のない方が心肺停止をきたし突然死となる疾患です。

    心臓震盪は健常人のスポーツ中の発生が多く,ほとんど救命されずに突然死となることから、近年ではメディアに広く取り上げられています。

    対策としては、捕球時にエラーをすることを責めずバックハンドでノックを受けるなど、直接胸部に衝撃が加わらないようにすることが挙げらます。

    打撲によって発熱することはありますか?

    打撲で患部が炎症を起こして患部に熱を持つ事はありますが、打撲により発熱したケースは当院では見受けられません。

    骨折の場合だと受傷後、発熱や気持ちが悪くなる方がいらっしゃいます。

    打撲の応急処置について

    打撲の応急処置は、RICE処置を行うようにしてください。

    RICE処置とは?

    Rest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)、これらの頭文字をとったものであり、捻挫、肉離れ、打撲、骨折のような外傷の緊急処置の基本です。

    最近では、安静だけでは、損傷した組織を保護できないことから、RICEにProtection(保護)を加えたPRICEと呼ばれるようになってきました。

    さらに近年において、急性損傷の早期管理として必要以上の固定、安静は悪影響を及ぼすことが分かってきており、安静(Rest)を、Optimal Loading(最適な負荷)に置き換えたPOLICEという考えも普及されつつあります。

    POLICE

    Protection(保護)

    装具やギブズシーネなどで損傷組織を保護し、再受傷を防ぐことが目的。

    Optimal Loading(最適な負荷)

    早期に最適な負荷をかけることで最適な組織修復を促すことが目的。例えば、足首を捻挫して、しっかりと患部を固定保護されていれば歩くことが推奨されます。

    またねちがえで頸椎カラーを処方されても1週間以上、装着するとかえって治りが悪くなります。

    完全に安静するより、出来る範囲で負荷をかけるほうが改善が早いという考えが広まっています。

    Icing(冷却)

    疼痛の緩和、過剰な筋収縮を改善することが目的。

    Compression(圧迫)

    患部の内出血や腫脹を防ぐことが目的。

    Elevation(挙上)

    浮腫の軽減が目的。

    いつまでも腫れや痛みひかない場合

    基本的に初回から適切な治療が行われていれば、痛みがずっと引かないということは考えられません。

    もし、痛みが長期的に引かない場合は下記原因が考えられます。

    1. 受傷直後からの治療が適切に行われず、症状が慢性化している
    2. 打撲でなく、骨折や関節の損傷を見逃している
    3. 糖尿病などの疾患をお持ちで、ケガの治りが遅い

    一般的には上記のような事が考えられます。

    特に圧迫固定と、炎症がひいた後の患部のケアは治りの良し悪しをとても左右します。

    打撲の治し方【当院のアプローチ】

    受傷3日間は患部のアイシングと圧迫固定を行い、炎症を抑え腫れを引かせます。

    その後、テーピングなどを用いて患部の保護を行いながら治癒促進の為に超音波や患部周囲に対して軽めのマッサージやリハビリを行います。

    治るまでにどれくらい期間がかかりますか?

    受傷直後の炎症による熱感は3日間をピークに治まってきます。

    腫れは1週間から2週間程度でひいてくることが一般的です。

    その後、軽い打撲であれば、1ヶ月で治ります。

     強い打撲の場合では、2.3カ月程度で症状は改善される方がほとんどです。

    症状が軽ければ、早く治りますし重度であれば治癒期間は長くかかります。 

    打撲の治療に保険を適用できますか?

    はい、打撲は保険適用となります。

    内容料金
    検査・治療・手技リハビリ保険料+1,100円(税込)
    ※保険を適用する場合、保険証が必要になります。

    ただし、健康保険の場合は日常生活でのケガのみとなります。お仕事中に打撲をしてしまった場合は労災保険となります。

    整骨院でも労災は取り扱っていますので、様式第7号(3)(業務災害用)、柔道整復師用の用紙に必要事項を記入してお持ちください。

    書き方がわからない場合はお伝えします。