
膝の痛みでお悩みの方は非常に多くいらっしゃいます。特に「立ち上がるときに膝の裏が痛い」「階段を降りるときに違和感がある」など、明確なケガがなくても日常の動作で痛みを感じることがあります。このような場合、意外と見落とされがちなのが**膝窩筋(しっかきん)**という筋肉です。
膝窩筋とは?―その解剖学と運動学
膝窩筋は膝関節の後面に位置する小さな筋肉で、大腿骨の外側顆から始まり、脛骨の後内側面に付着しています。関節包とも関連が深く、「膝関節のロックを解除する筋肉」として知られています。
この筋肉は単体での筋力は強くありませんが、膝関節の安定性やスムーズな動きに不可欠な役割を担っています。特に膝関節の屈曲初期に重要で、静的な姿勢保持や細かな関節運動においても働いています。
スクリューホームムーブメントと膝窩筋の役割
膝関節の特徴的な運動のひとつに「スクリューホームムーブメント」があります。これは膝を伸ばしきるときに起こる、大腿骨と脛骨のねじれ動作のことです。
具体的には、膝を完全に伸ばす際、脛骨が外旋(外側に回る)することで関節がロックされ、立位姿勢を安定させます。逆に、膝を曲げ始める際にはこのロックを解除する必要がありますが、そのときに働くのが膝窩筋です。
膝窩筋は、膝屈曲時に脛骨を内旋させてスクリューホームムーブメントを「解除」し、スムーズに膝を曲げられるようサポートします。
この動作がうまく行われないと、膝の裏側に緊張や違和感が出たり、膝全体のバランスを崩して痛みの原因となることもあります。
膝窩筋のトラブルによる症状
膝窩筋に問題がある場合、次のような症状が現れることがあります:
- 膝裏の鈍痛や違和感
- 階段の昇降での痛み
- 膝の引っかかり感
- 正座やしゃがみ込みがしづらい
- 膝関節を伸展できない
これらの症状は、MRIやレントゲンには映らないことも多いため、触診や動作評価を通じた判断が重要です。
参考にした学術論文
- 「膝窩筋に着目した膝関節痛へのアプローチ」
- 「膝関節屈曲初期における膝窩筋の活動評価」『理学療法科学』
- 「スクリューホームムーブメントと膝窩筋の機能的関連」『日本整形外科スポーツ医学会雑誌』
横須賀市で膝の痛みでお困りなら一会整骨院へ
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まとめ
膝の裏の痛みに関連する膝窩筋(しっかきん)について、解剖学的な機能から症状・対処法までを解説します。この筋肉は膝関節の安定性やスムーズな動きに深く関わっており、日常的な動作に影響を与える重要な存在です。
膝窩筋の解剖学的特徴
- 位置:膝関節後面に存在(大腿骨外側顆→脛骨後内側面)
- 構造:関節包と密接に関連
- サイズ:小さな筋肉ながら複雑な機能を担う
主な機能とメカニズム
機能 | 詳細 |
---|---|
膝屈曲の初期動作 | スクリューホームムーブメント解除 |
脛骨内旋 | 膝安定化に寄与 |
半月板保護 | 外側半月板の挟み込み防止 |
関節安定化 | 後外側支持機構(PLC)構成要素 |
スクリューホームムーブメント:膝伸展時の脛骨外旋ロックを解除する重要な役割
主な症状と関連疾患
- 自覚症状
- 階段降下時の膝裏痛
- 正座時の違和感
- 膝伸展制限
- 関連疾患
- 膝窩筋腱炎
- 変形性膝関節症
- 鵞足炎
- 半月板損傷
原因となる要因
- 生活習慣
- 長時間座位
- 猫背姿勢
- 解剖学的要因
- 内反膝
- 反張膝
効果的なセルフケア
ストレッチ方法
- 腓腹筋ストレッチ(ふくらはぎ全体の柔軟性向上)
- 壁に手をつき前足に体重を乗せ、20秒保持
- ボールマッサージ
- テニスボールで膝窩部を軽く圧迫(強圧回避)
注意点
- 炎症急性期(痛み発生後1-3日)は安静優先
- 自己流の強圧マッサージは逆効果
- 筋膜ローラーの過度な使用禁止
専門的治療法
治療法 | 内容 | 効果 |
---|---|---|
物理療法 | 超音波/低周波 | 炎症軽減 |
手技療法 | 筋膜リリース | 滑走性改善 |
注射療法 | ヒアルロン酸 | 潤滑作用向上 |
運動療法 | 荷重調整訓練 | 動作パターン改善 |
予防のポイント
- 座り姿勢:30分ごとに軽い屈伸運動
- 運動前:ダイナミックストレッチ入念に
- 筋力強化:大腿四頭筋とハムストリングスのバランス調整
膝窩筋の問題は画像診断で判別しにくいため、動作分析と触診が重要です。慢性化する痛みの場合、整形外科や整骨院での専門的評価が推奨されます。早期介入で半月板損傷や変形性関節症の予防が可能となるため、違和感を感じたら早めの対応を心がけましょう。