
こんにちは、横須賀市の一会整骨院です。今回は運動部やスポーツ愛好家に多い「グローインペイン症候群」についてわかりやすく解説します。
グローインペインとは
グローインペイン症候群(鼠径部痛症候群)は、鼠径部(そけいぶ:足の付け根)周辺に痛みが生じるスポーツ障害です。英語で「Groin Pain(鼠径部の痛み)」が名前の由来となっています。
単一の原因ではなく、股関節周囲の筋肉や関節の機能不全が複雑に絡み合って発症するため、「症候群」と呼ばれています。痛みは鼠径部だけでなく、下腹部や太ももの内側、恥骨周辺にも広がることがあります。
どんな人がなりやすいのか
競技別
特に以下のスポーツをされている方に多く見られます:
- サッカー(最も多い):キック動作、方向転換、ストップ動作が頻繁
- ラグビー:激しいコンタクトプレーとランニング
- 陸上競技(短距離・ハードル):股関節の繰り返し動作。特に陸上競技ではトラックは左回りなので左に痛みを訴える方が多いように臨床上感じています。
- 剣道:踏み込み動作
- アイスホッケー:スケーティング時の股関節への負担
年齢層
- 10代後半〜30代前半のアスリートに最も多い
- 特に高校生〜大学生の競技レベルが上がる時期に発症しやすい。
- 中学生でも激しいトレーニングをしている場合は注意が必要
なりやすい人の特徴
- 練習量が急激に増えた方
- 体幹や股関節の柔軟性が低下している方
- 左右の筋力バランスが崩れている方
- 過去に股関節や腰部を痛めたことがある方
- 姿勢の悪さ
回復までの期間
グローインペイン症候群の回復期間は症状の程度や治療開始時期によって大きく異なります:
軽症の場合
- 4〜6週間:適切な治療とリハビリで改善
- 痛みがあるうちは練習を控えて下さい
中等度の場合
- 2〜3ヶ月:包括的な治療プログラムが必要
重症・慢性化した場合
- 3〜6ヶ月以上:長期的なリハビリが必要
重要なポイントは、痛みを我慢して競技を続けると慢性化し、回復が大幅に遅れることです。早期発見・早期治療が回復への近道となります。
治療に仙腸関節・大腰筋・背骨の可動域が大切な理由
仙腸関節の重要性
仙腸関節は骨盤の後ろ側にある関節で、上半身と下半身をつなぐ「力の中継地点」です。
なぜ大切なのか。
- 歩行やランニング時に体重の衝撃を吸収する
- 仙腸関節の動きが悪くなると、股関節や鼠径部に過剰な負担がかかる
- 骨盤の安定性が失われると、片脚立ちやキック動作で鼠径部の筋肉に負担が集中
大腰筋の役割
大腰筋は腰椎(背骨の腰の部分)から太ももの骨(大腿骨)につながる深部の筋肉です。
なぜ大切なのか:
- 股関節を曲げる(脚を前に上げる)主要な筋肉
- 大腰筋が硬くなると、鼠径部や恥骨に付着する筋肉に過剰なストレスがかかる
- キック動作やランニングで過度に働くと、鼠径部周辺の筋肉とのバランスが崩れる
- 大腰筋は骨盤の位置をコントロールするため、この筋肉の機能不全は骨盤の歪みにつながる
背骨(脊柱)の可動域
背骨、特に腰椎と胸椎の動きは全身の動作の土台です。
なぜ大切なのか。
- 背骨の回旋(ひねり)動作が制限されると、股関節や鼠径部で代償しようとする
- サッカーのキック動作は、背骨→骨盤→股関節という連動した動きが必要
- 背骨の柔軟性が低下すると、骨盤や股関節の可動域も制限される
- 結果として鼠径部周辺の筋肉に過度な負担がかかり、痛みが発生
3つの関連性
これら3つは「キネティックチェーン(運動連鎖)」として機能しています:
- 背骨の動き→仙腸関節の動き→股関節の動き、という連動
- 大腰筋は背骨から股関節をつなぐ「架け橋」
- どこか1つの機能が低下すると、他の部分が過剰に働き、鼠径部に負担が集中
当院では、痛みのある鼠径部だけでなく、これら全体のバランスを整えることで根本的な改善を目指しています。
当院での治療アプローチ
一会整骨院では、グローインペイン症候群に対して以下のような包括的な治療を行います:
- 仙腸関節の調整と骨盤の安定化
- 大腰筋を含む股関節周囲筋のリリース
- 背骨(胸椎・腰椎)の可動域改善
- 体幹トレーニング指導
- 競技復帰へのリハビリプログラム
横須賀市で鼠径部の痛みでお悩みの方は、我慢せずお早めにご来院下さい。重症になればなるほど復帰に時間がかかり選手のモチベーションが低下してしまいます。
スポーツ障害は早期治療がとても重要です。
一会整骨院
神奈川県横須賀市根岸町5-21-38 奥山ビル1F右
☎046-845-9171
ご予約はこちらから=https://ichie21.net/contact/
参考文献
- 日本整形外科学会・日本整形外科スポーツ医学会「グローインペイン症候群診療ガイドライン2022」
- 内田宗志「グローインペイン症候群の病態と治療」『臨床スポーツ医学』Vol.33, No.10, 2016
- Weir A, et al. “Doha agreement meeting on terminology and definitions in groin pain in athletes” British Journal of Sports Medicine, 2015
- 仁賀定雄「サッカー選手における鼠径部痛症候群の理学療法」『理学療法学』第43巻, 2016
- 金岡恒治「体幹機能とスポーツ障害」『臨床スポーツ医学』Vol.32, 2015
- 坂井建雄・河原克雅『プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系』第3版, 医学書院, 2016