側弯症がある場合、左右同じケアは
かえって逆効果になることがある
なぜ「均等に緩める」という常識が側弯症では通用しないのか。院長自身の経験も交えて解説します。
慢性腰痛で当院を訪れる患者さんの中に、「以前から側弯があると言われているけれど、特に何もしてこなかった」という方が少なくありません。整骨院や整体で施術を受けたものの痛みが改善しないどころかむしろ悪化した、という経験をお持ちの方もいます。その背景に「左右同じように筋肉を緩める」という、側弯症には合わないアプローチが関係していることがあります。
今回は、側弯症の基礎的な定義からはじまり、左右の凸側の統計、そして左凸(腰椎が左に弯曲する)タイプの方に必要な筋肉へのアプローチについて詳しく解説します。
そもそも「側弯症」とはどういう状態か
背骨は正面から見たとき、まっすぐに並んでいるのが正常な状態です。しかし側弯症では、脊柱が左右に弯曲し、さらに椎骨が回旋(ねじれ)を伴って変形します。単純に「曲がっている」だけでなく、三次元的にねじれながら変形するという点が側弯症の大きな特徴です。
X線写真で測定される「コブ角」が10度以上の場合に側弯症と診断されます。コブ角とは、弯曲の頂点を挟む上下の椎体が傾く角度を計測したものです。日本整形外科学会によると、10度以上の側弯は人口の2〜3%にみられ、20度以上は0.3〜0.5%、40度以上になると0.1%未満とされています。
原因の分類としては、原因が特定できない「特発性側弯症」が全体の約80%を占め、最も多いとされています。思春期特発性側弯症では、女児が男児の5〜8倍多く発症すると報告されています。それ以外には、神経・筋疾患を背景とする「症候性側弯症」や椎骨の形成異常による「先天性側弯症」、そして加齢や椎間板の変性に伴い成人以降に発症する「変性側弯症(成人側弯症)」なども存在します。
機能的側弯と構築性側弯という分類もあります。機能的側弯は、姿勢の癖・片側への荷重・痛みによる逃避姿勢などが原因で生じるもので、原因を解消すれば改善が見込めます。一方、構築性側弯は骨格そのものに変形が固定した状態で、筋肉や姿勢のアプローチだけでは骨格の変形を戻すことはできません。ただし、痛みや機能低下の軽減には、適切な運動療法と筋肉ケアが有効です。
胸椎は右凸が多く、腰椎は左凸が多い
「側弯」といっても、背骨のどの部分がどちらに弯曲しているかによって、身体への影響や必要なケアが大きく異なります。
胸椎が右凸を示す割合
左凸を示すことが多い
側弯症(10度以上)の有病率
特発性側弯症で最も多いパターンは、胸椎が右凸、腰椎が左凸というS字型のカーブです。胸椎では右側に凸を描くように弯曲し、それを代償するように腰椎では左側に弯曲が生じます。したがって、腰痛を主訴として来院される患者さんでは、腰椎の左凸側弯を抱えているケースが多くなります。
加えて、成人以降に発症する変性側弯症においても、腰椎での変性は左側への弯曲傾向を示すことが多く、腰痛との関連性が指摘されています。腰椎左凸の状態では、右の腰方形筋や傍脊柱筋が短縮・緊張し、左の筋群が伸張されてコントロールを失いやすくなります。
なぜ「左右同じに緩める」ことが逆効果になるのか
一般的な腰痛施術では、腰まわりの筋肉を両側バランスよくほぐすアプローチが取られます。それ自体は標準的な慢性腰痛に対しては有効ですが、側弯症の場合、左右の筋肉が担っている役割が根本的に異なります。
背骨は、単に筋肉が固くなっているから痛いのではなく、左右の筋力バランスと張力の偏りによって不安定な状態に置かれているために痛みが生じています。均等に緩めることは、ときにその不安定さをさらに広げることになるのです。
また、腰方形筋(QL)は腰椎を側屈させる作用を持ちます。凸側(左凸の場合は左側)のQLは引き伸ばされながらも過緊張しているため、ここを緩めることは理にかなっています。しかし、側屈ストレッチ(サイドベンド)を凸側に向けて行ってしまうと、同じ左側のQLを逆にさらに動員してしまうため逆効果です。筋肉の「緩め方の方向」にも細心の注意が必要です。
腰椎左凸の場合:緩めるべき筋肉と鍛えるべき筋肉
腰椎が左に弯曲している(左凸側弯)場合、弯曲の頂点は左側にあります。凸側(左側)は筋肉が伸張ストレスを受けながら収縮し続けており、凹側(右側)の筋肉は短縮して使われにくくなっています。この前提のもとに、介入方向を整理します。
- 左側の腰方形筋(QL)
弯曲の凸側で過緊張しやすい - 左側の腸肋筋・最長筋
傍脊柱筋群の伸張緊張 - 左側の大殿筋・中殿筋
骨盤傾斜の影響で緊張しやすい - 左側のハムストリングス
左の骨盤後傾を引き起こすことがある
- 右側の多裂筋
凹側の脊柱安定化に最重要 - 右側の腹斜筋(内腹斜筋)
右への側屈を引き戻す力 - 右側の中殿筋
骨盤の左落ち込みを防ぐ - 右側の内転筋群
骨盤・仙骨のアライメント補正
特に多裂筋は各椎体の回旋を引き戻す機能を持ち、側弯に伴うねじれのコントロールに不可欠です。凹側(右側)の多裂筋が適切に活性化されることで、腰椎のセグメンタルな安定性が高まり、痛みの軽減に直結します。
院長・杉田自身も左凸の側弯があります
実は私自身、腰椎に左凸の側弯があります。柔道整復師として日々患者さんと向き合いながら、自分の体の状態とも長年つき合ってきました。
通常のトレーニングは継続しています。ただし自分自身のセルフケアに関しては、左右まったく同じことはしていません。右側の多裂筋と中殿筋を意識的に使うエクササイズを取り入れ、左側は過度に負荷をかけないよう気をつけています。以前は腰の重さやだるさが続くことがありましたが、今はそういった辛さはほとんど感じていません。
側弯症は「治す」ことより「うまくつき合う」という視点が大切です。適切な非対称ケアを継続することで、痛みなく日常を送ることは十分に可能です。
側弯症による腰痛は、中長期的な視点でのケアが必要
側弯症による慢性腰痛は、通常の慢性腰痛よりも患者さん個々の状態の把握が重要です。同じ「腰椎左凸」であっても、コブ角の大きさ・回旋の程度・骨盤のアライメント・股関節の動き・日常の動作パターンによって、緩めるべき筋肉の優先順位や、活性化すべき筋肉の組み合わせはそれぞれ異なります。
これらを総合的に評価したうえで、その患者さんに合った施術と自宅でのセルフエクササイズを組み立てていきます。1〜2回の施術で完結するものではなく、定期的な状態の再評価を行いながら、中長期的にアプローチを調整し続けることが大切です。
「側弯があっても痛みなく動けている人」は世の中にたくさんいます。骨格の変形そのものを変えることはできなくても、筋肉のバランスと使い方を整えることで、痛みのない生活は十分に手が届く目標です。
側弯症は、施術によって背骨がまっすぐになることはありません。それよりも大切なのは、痛みや不快な症状が出ない状態をいかに保ち続けるか、という視点です。そのためには、体の状態を定期的に確認しながら、中長期的にケアを続けていくことが必要です。「以前から側弯があると言われているけれど、腰痛がずっと続いている」「施術を受けても楽にならない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。側弯の特性を踏まえたアプローチで、あなたの体に合ったケアを一緒に考えていきます。
側弯症による腰痛の治療は、一会整骨院へ
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