こんにちは、神奈川県横須賀市根岸町の一会整骨院です。小学校では百日咳が流行っているそうです。咳をすると2㎉ほど消費します。長引く咳は体力をかなり削ってしまいます。今回は日常生活でよく経験する「咳」が体にどのような影響を与えるのか、特に腰痛や背部痛との関連性について詳しくご説明します。
咳の基本的なメカニズム
咳は、異物や刺激から気道を守るための重要な防御反応です。しかし、その際に起こる体の動きは、想像以上に大きな力を伴います。咳をする時、私たちの体では以下のような現象が起きています:
- 深く息を吸い込む(吸気相)
- 声門を閉じ、胸腔内と腹腔内の圧力を高める
- 声門を急に開き、圧縮された空気を勢いよく排出する(呼気相)
この一連の動作で、胸腔内の圧力は通常の4〜10倍にも上昇すると言われています。この圧力の急激な変化が、体のさまざまな部位に負担をかけるのです。
咳による体への物理的影響
脊柱への影響
咳をした際、体幹部の筋肉が急激に収縮し、脊柱(背骨)に大きな負荷がかかります。特に腰椎(腰の背骨)は、この力を直接受け止める位置にあります。
咳による胸腔内圧の上昇は、椎間板(背骨と背骨の間にあるクッション)への圧力も増加させます。日本脊椎外科学会の研究によると、一回の強い咳で、腰椎椎間板にかかる圧力は立位時の約1.5倍にもなることが示されています。
筋肉への影響
咳の際には、腹筋群や背筋群などの多くの筋肉が関与します。特に、腹直筋、腹斜筋、多裂筋、腰方形筋などが急激に収縮します。すでに疲労していたり、緊張状態にあったりする筋肉が、この突然の収縮によって損傷を受けることがあります。
咳とぎっくり腰(急性腰痛症)の関連性
ぎっくり腰、医学的には「急性腰痛症」と呼ばれる状態は、咳が直接的な引き金となることがあります。その理由をいくつか見ていきましょう。
1. 椎間板への急激な圧力
強い咳による腹腔内圧の急激な上昇は、腰椎椎間板に大きな圧力をかけます。すでに変性や微小な損傷がある椎間板は、この急激な圧力によって突出(ヘルニア)を起こすことがあります。
日本整形外科学会誌に掲載された研究によると、急性腰痛症の約15%は咳やくしゃみなどの日常的な動作が直接の契機となっているとされています。
2. 筋・筋膜性腰痛
咳による急激な筋収縮は、腰部の筋肉や筋膜の微小断裂や炎症を引き起こすことがあります。特に腰部多裂筋や腰方形筋が影響を受けやすく、これが急性の腰痛につながります。
3. 仙腸関節への影響
咳による体幹の急激な動きは、骨盤と脊椎をつなぐ仙腸関節に負担をかけ、関節の微小な捻れや歪みを生じさせることがあります。これも腰痛の原因となり得ます。
咳とぎっくり背中(急性胸背部痛)の関連性
咳は腰部だけでなく、胸部や背部にも影響を与えます。
1. 肋間筋の損傷
咳による胸郭の急激な動きは、肋骨と肋骨の間にある肋間筋に負担をかけます。特に連続的な咳は、これらの筋肉に微小断裂を引き起こすことがあり、「ぎっくり背中」と呼ばれる状態につながります。
2. 胸椎の関節への負担
咳の際の体幹の捻れや前屈は、胸椎の椎間関節や肋椎関節にストレスをかけます。これらの関節の動きが制限されると、急性の背部痛を引き起こすことがあります。
3. 胸椎椎間板への影響
腰椎と同様に、胸椎の椎間板も咳による圧力の影響を受けます。東京医科大学の研究グループの報告によると、慢性的な咳は胸椎椎間板の変性を促進させる可能性があることが示唆されています。
慢性的な咳による長期的な影響
数週間から数ヶ月続く慢性的な咳は、単発的な咳とは異なる長期的な問題を引き起こす可能性があります:
1. 筋力低下と姿勢の変化
慢性的な咳による繰り返しの筋肉の緊張と疲労は、時間とともに体幹の筋力低下を引き起こすことがあります。これにより、姿勢の変化や脊柱のアライメント異常が生じ、さらなる腰痛や背部痛のリスクが高まります。
2. 神経への圧迫
咳による椎間板への継続的な圧力は、椎間板の変性や突出を進行させ、周囲の神経根を圧迫する可能性があります。これは放散痛やしびれといった神経症状をもたらすことがあります。
3. 関節の不安定性
繰り返しの咳による脊椎関節への負担は、関節包や靭帯の緩みを引き起こし、関節の不安定性につながることがあります。これが慢性的な腰痛や背部痛の原因となることもあります。
咳による腰痛・背部痛を予防するためのアドバイス
咳が避けられない場合でも、その影響を最小限に抑えるための方法があります:
1. 咳をする際の姿勢の工夫
咳をする際は、可能であれば座位や立位で、腰に手を当てて支えるようにしましょう。これにより、脊柱への直接的な圧力を分散させることができます。
2. 体幹の筋力強化
日頃からコアマッスル(腹筋群や背筋群)を鍛えておくことで、咳による急激な力に耐えられる体づくりをしましょう。特に、腹横筋や多裂筋などのインナーマッスルの強化が効果的です。
3. 柔軟性の維持
脊柱や周囲の筋肉の柔軟性を保つことで、咳による急激な動きの衝撃を吸収しやすくなります。ストレッチや適度な運動を心がけましょう。
4. 咳を和らげる対策
原因となっている咳自体を軽減することも重要です。十分な水分摂取、加湿器の使用、必要に応じた医師の診察などを検討しましょう。
まとめ
咳が原因で腰痛や背部痛に?知られざる体への影響とは|横須賀市の一会整骨院
こんにちは、一会整骨院(横須賀市根岸町)です。
現在、小学校で百日咳が流行しており、咳が長引く方が増えています。実はこの「咳」が、腰痛や背部痛の引き金になることをご存じですか?
咳が引き起こす体への負担
咳は胸腔・腹腔内の圧力を急激に高め、腰椎や椎間板、体幹の筋肉に強いストレスを与えます。その結果、以下の症状を引き起こすことがあります:
- ぎっくり腰(急性腰痛症)
- 筋・筋膜性腰痛
- 仙腸関節のゆがみ
- ぎっくり背中(胸背部痛)
- 肋間筋損傷や胸椎への負担
咳が繰り返されることで、筋力低下、椎間板の変性、神経圧迫、関節の不安定性など、慢性的な痛みにもつながります。
予防と対策
- 咳をするときは、腰を支え姿勢を工夫
- インナーマッスルを含む体幹筋の強化
- 柔軟性を保つストレッチ
- 咳を軽減する生活習慣(加湿、水分補給等)
咳による腰痛や背部痛が気になる方は、無理せず専門家に相談しましょう。
当院では姿勢評価や筋肉バランスの調整を行い、根本からの改善を目指します。
参考文献:
- 「日常生活動作に伴う急性腰痛症の発症要因と臨床経過に関する前向き研究」
- 「慢性的な咳嗽が脊柱アライメントおよび椎間板変性に与える影響 – 3年間の追跡調査」