こんにちは、神奈川県横須賀市根岸町の一会整骨院です。今回は多くの方が悩まれている「腰痛」と「お腹の筋肉の硬さ」の関係について詳しくご説明します。「腹筋を鍛えれば腰痛が治る」という話をよく耳にします。当院に来院される患者様も痛みが取れてきたら「腹筋した方がいいですか?」と仰る方は多いです。
腹筋と腰痛はとても関係していますが、単に鍛えればいいという単純は話ではありません。この記事では、腹部の筋肉の役割と腰痛との関係をわかりやすく解説していきます。

お腹の筋肉(腹筋群)の基本構造
まず、「腹筋」と一言で言っても、実は複数の筋肉で構成されていることをご存知でしょうか。主な腹部の筋肉は以下の通りです:
1. 腹直筋
いわゆる「シックスパック」として知られるお腹の前面にある縦長の筋肉です。胸骨の下部と恥骨をつなぎ、主に体幹を前に曲げる働きをします。
2. 腹横筋
腹部の最も深い層にある筋肉で、コルセットのように体を取り巻いています。この筋肉は姿勢の維持やお腹を引き締める役割を担っています。
3. 内腹斜筋
腹横筋の外側に位置し、体幹のひねり動作や側屈(横に曲げる)動作に重要な役割を果たします。
4. 外腹斜筋
腹部の表層にある筋肉で、体の側面から腹部前面にかけて斜めに走っています。体幹のひねりや側屈に関与します。
5. 腹横筋膜(腹膜)
筋肉ではありませんが、腹部の筋肉を支える重要な膜構造です。
これらの筋肉は単独ではなく協調して働き、体幹の安定性を保ちます。ただ単に「腹筋運動」と言っても、これらすべての筋肉をバランスよく鍛えられるわけではないことを理解することが重要です。
腹筋の機能と運動学
腹部の筋肉が持つ主な機能は以下の通りです:
1. 体幹の安定化
特に腹横筋は、背骨を安定させる「コルセット効果」を持ちます。適切に働くことで、日常動作や運動時に脊柱を安定させます。
2. 姿勢維持
腹筋群は骨盤の位置を適切に保ち、背骨のアライメントを支えます。腹筋が弱まると、骨盤が前傾しやすくなり、腰椎に負担がかかります。
3. 内臓の保護とサポート
腹部の筋肉は内臓を適切な位置に保持し、保護する役割もあります。
4. 呼吸への関与
特に横隔膜との協調により、効率的な呼吸を可能にします。腹筋の緊張が強すぎると、呼吸が浅くなることがあります。
5. 圧力調整
お腹に力を入れることで腹腔内圧を高め、重いものを持ち上げる際などに脊柱を保護します。
腹筋の動きは単純なようで実は複雑です。例えば、腹直筋は体を前に曲げる動作に関与しますが、それだけでなく骨盤の位置にも影響します。また、深層の腹横筋は目に見える動きを作るというよりも、脊柱を安定させるための「引き締め」に重要です。
腹筋の硬さと腰痛の関係
ここからが重要なポイントです。腹筋が弱いと腰痛につながる可能性がある一方で、腹筋が硬すぎても問題が生じることがあります。
腹筋が弱い場合の問題点
腹筋が弱いと、体幹の安定性が失われ、日常動作で腰に負担がかかりやすくなります。特に腹横筋の機能不全は、腰痛患者によく見られる特徴です。2013年の研究では、慢性腰痛患者は健康な人に比べて腹横筋の厚みや収縮能力が低下していることが報告されています。
腹筋が硬すぎる場合の問題点
一方で、腹筋が過度に緊張し硬くなりすぎることも腰痛の原因になり得ます。その理由は以下の通りです:
- 動きの制限: 筋肉が硬すぎると、体の自然な動きが制限され、他の部位に過剰な負担がかかります。
- 血流の減少: 長時間緊張した筋肉は血流が悪くなり、老廃物が蓄積して痛みの原因となります。
- 筋肉の不均衡: 腹筋が過緊張すると、背筋との間に不均衡が生じ、姿勢に悪影響を及ぼします。
- 呼吸パターンの変化: 腹部が硬いと横隔膜の動きが制限され、浅い胸式呼吸になりがちです。これが自律神経のバランスを崩し、痛みに対する感受性を高めることがあります。
- 内臓への影響: 腹部の慢性的な緊張は内臓の機能にも影響し、それが反射的に腰部の緊張を高めることがあります。
実際に、2018年に発表された研究では、腹直筋や腹斜筋の過剰な緊張が腰痛患者に見られることが指摘されています。これは単に「筋力不足だから腰痛になる」という単純な図式ではなく、筋肉の適切なバランスと調和が重要であることを示しています。
「腹筋をすれば腰痛は治る」は本当か?
結論から言うと、「腹筋運動をすれば腰痛が治る」という単純な考え方は誤りです。その理由をいくつか挙げてみましょう:
1. 腰痛の原因は多様
腰痛には様々な原因があります。椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、筋筋膜性疼痛症候群、心理社会的要因など、腰痛の原因は一つではありません。したがって、単に腹筋を鍛えるだけでは根本的な解決にならないケースが多いのです。
2. 間違った腹筋運動はかえって悪化させる
特に伝統的なシットアップなどの腹筋運動は、腰椎に大きな圧力をかけることが研究によって示されています。2009年のMcGill博士の研究では、従来のシットアップ運動は腰椎に約3,300ニュートンもの圧縮力を生じさせることが明らかになっています。これは腰痛を悪化させるリスクがあります。
3. 筋肉のバランスの問題
単に腹筋を強くするだけでは、背筋との不均衡を生じさせる可能性があります。体幹の前後左右のバランスが取れていることが重要です。
4. 筋肉の質と協調性の問題
筋力だけでなく、筋肉の質(柔軟性や反応性)や協調して働く能力も重要です。腹筋運動だけでは、これらの要素を十分に改善できないことがあります。
5. 深層筋と表層筋のバランス
多くの腹筋運動は表層の腹直筋に焦点を当てていますが、腰痛予防には深層の腹横筋の機能が特に重要であることが研究で示されています。
効果的なアプローチ:何をすべきか
では、腰痛改善のために何をすべきでしょうか?以下に効果的なアプローチをご紹介します:
1. 適切な筋肉のリリース
硬くなった腹部の筋肉をまずはリリース(緩める)することが重要です。セルフマッサージやストレッチ、呼吸法などが効果的です。特に横隔膜と腹筋の協調関係を改善する深い呼吸は、過緊張した筋肉を緩和するのに役立ちます。
2. コア安定化エクササイズ
腹横筋や多裂筋などの深層筋を意識的に活性化するエクササイズが効果的です。例えば:
- ドローイン: お腹をへこませて腹横筋を意識的に収縮させるエクササイズ
- プランク: 正しいフォームで行えば、深層筋を効果的に働かせられます
- ピップアップ: 骨盤底筋や深層筋の協調性を高めます
3. 総合的なアプローチ
腰痛改善には、以下の要素を組み合わせた総合的なアプローチが最も効果的です:
- 適切なストレッチと筋肉のリリース
- コア安定化トレーニング
- 姿勢改善
- 日常生活動作の見直し
- ストレス管理
- 十分な休息と睡眠
4. 腰痛に強い治療院を受診する
自己流のエクササイズが正しいのかどうか、最近ではYouTubeで動画を見たという患者様もすくなくありません。私自身すべての動画を把握しているわけでありませんが(笑)動画内容が患者様に合っているかはわかりません。本人は良しと思ってされている運動が強度が強すぎて腰痛を悪化させてしまうこともありますので、一度ご相談ください。
一会整骨院のアプローチ
当院では、腰痛に悩む患者さんに対して、単に「腹筋を鍛えましょう」と言うのではなく、以下のような総合的なアプローチを行っています:
- 詳細な評価: 姿勢分析、筋肉の緊張度、動作パターンなどを評価し、腰痛の真の原因を特定します。
- 適切な手技療法: 硬くなった筋肉をリリースし、動きを改善するための手技を行います。
- 個別化されたエクササイズ指導: その方の状態に合わせた、適切な自宅でのエクササイズを指導します。
- 生活習慣のアドバイス: 日常生活での姿勢や動作について、具体的なアドバイスを提供します。
まとめ:腹筋と腰痛の複雑な関係
腹筋と腰痛の関係は、単純に「鍛えれば治る」というものではありません。重要なのは以下のポイントです:
- 腹筋群は複数の筋肉からなり、それぞれが体幹の安定性に重要な役割を果たしています。
- 腹筋が弱すぎても硬すぎても腰痛の原因になり得ます。
- 効果的な腰痛改善には、筋肉のリリース、適切なトレーニング、生活習慣の改善など、総合的なアプローチが必要です。
- 自己流のエクササイズには注意が必要で、専門家の指導を受けることをお勧めします。
腰痛でお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。あなたの状態に合わせた最適なケアプランをご提案いたします。
北久里浜駅、堀ノ内駅から車で2分 完全予約制
横須賀市根岸町5-21-38 1F右 一会整骨院
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