
石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)は、肩の腱板内にリン酸カルシウム結晶が沈着することで急性の炎症が起こり、激しい肩の痛みや運動制限を引き起こす疾患です。特に40~50歳代の女性に多くみられ、夜間に突然激痛が生じ、睡眠が妨げられることが特徴です1。
発症の経過は、
- 急性型(1~4週):強い痛みが続く
- 亜急性型(1~6ヵ月):中等度の痛みが続く
- 慢性型(6ヵ月以上):運動時の痛みが持続する
というように分けられます1。
四十肩・五十肩との違い
**四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)**は、加齢による肩関節や腱板の炎症が主な原因で、40代・50代に多く発症します。肩の痛みと可動域制限が主な症状で、発症年齢によって呼び名が異なるだけで、病態や症状に違いはありません23。
違いのポイント:
- 石灰沈着性腱板炎は、腱板内に石灰(リン酸カルシウム)が沈着し、急激な激痛が特徴。特に夜間の激痛で睡眠が妨げられることが多い1。
- 四十肩・五十肩は、肩の動きの悪さや痛みが徐々に進行し、発症も緩やか。痛みは鈍痛や重だるさが多く、急激な激痛は比較的少ない23。
- 石灰沈着性腱板炎はレントゲンで石灰の沈着が確認できるのに対し、四十肩・五十肩ではそのような所見は見られません13。
比較項目 | 石灰沈着性腱板炎 | 四十肩・五十肩(肩関節周囲炎) |
---|---|---|
原因 | 腱板内の石灰沈着 | 加齢による肩周囲組織の炎症 |
症状 | 急激な激痛、夜間痛 | 徐々に進行する痛み、可動域制限 |
画像診断 | 石灰沈着が写る | 特徴的な画像所見なし |
好発年齢 | 40~50代女性に多い | 40代~50代に多い |
治療 | 保存療法中心、時に吸引 | 薬物療法・リハビリ中心 |
腱板断裂との違い
腱板断裂は、肩の腱板が物理的に断裂することで発症します。四十肩・五十肩や石灰沈着性腱板炎と同じく中高年に多いですが、原因としては外傷や長年の肩の酷使が関与することが多いです4。
違いのポイント:
- 腱板断裂は、肩を動かすときに「ジョリジョリ」といった異音がすることがあり、肩の筋力低下や特定の動作で力が入らないことが特徴です4。
- 肩関節を他力では挙上できるが、自力では上げることが出来ないドロップアームテストが陽性となります。
- 石灰沈着性腱板炎では、画像診断で石灰沈着が明確に確認できますが、腱板断裂ではMRIで断裂部位が確認されます14。
- 腱板断裂は夜間痛が強いこともありますが、肩の動き自体が著しく制限されることは少ない場合があります4。
比較項目 | 石灰沈着性腱板炎 | 腱板断裂 |
---|---|---|
原因 | 腱板内の石灰沈着 | 腱板の物理的断裂 |
症状 | 急激な激痛、夜間痛 | 動作時痛、筋力低下、異音 |
画像診断 | 石灰沈着が写る | MRIで断裂が確認される |
好発年齢 | 40~50代女性に多い | 40代~高齢者 |
治療 | 保存療法中心、時に吸引 | 保存療法~手術 |
診断と治療
石灰沈着性腱板炎は、圧痛部位や肩の動き、X線や超音波検査で石灰沈着を確認することで診断します。腱板断裂の合併が疑われる場合はMRIも用いられます1。
治療は急性期では針で石灰を吸引したり、消炎鎮痛剤や局所注射、安静を保つ保存療法が中心です。慢性化した場合や痛みが強い場合は手術も検討されます1。
まとめ
- 石灰沈着性腱板炎は、急激な激痛と石灰沈着が特徴。
- 四十肩・五十肩は、加齢による肩関節周囲の炎症で、痛みは徐々に進行。
- 腱板断裂は、腱板の断裂による筋力低下や異音が特徴。
- 画像診断(レントゲン、超音波、MRI)で鑑別が重要です。