筋肉痛の原因・症状・応急処置について

    筋肉痛とは、運動によって生じる筋肉の痛みの総称をいいます。

    筋肉痛は大きく2つに分類されています。

    1つ目は即発性筋痛。急性筋肉痛とも呼ばれ、運動した直後や運動の最中に起こる筋肉痛です。

    激しい運動をして筋肉に強い負荷がかかり、過度の緊張状態が続くと、血の巡りが悪くなるため、筋肉の代謝物である水素イオンがたまりやすくなって筋肉痛が起こる状態です。

    2つ目は遅発性筋痛 。一般的な筋肉痛で皆さんがイメージする筋肉痛はこれにあたります。

    運動やトレーニングをして数時間から数日後に生じる筋肉痛です。

    なぜ筋肉痛は起きる?

    以前は、激しい運動や筋肉トレーニングをすると筋肉に疲労物質である乳酸がたまり、筋肉痛を引き起こすと考えられていました。

    しかし、乳酸はエネルギーとして再利用できることがわかり、現在では乳酸は疲労物質ではないと考えられています。

    現在、有力な説は、運動やトレーニングにより筋繊維の損傷を修復する際に、炎症が起こって痛みを引き起こすという説です。

    トレーニングなどで普段使わない筋肉を使ったり、同じ動作を繰り返したりすると、筋肉を構成している筋繊維に細かな傷ができます。

    傷んだ筋肉を修復する過程で炎症反応が生じて、ブラジキニン、プロスタグランジン、ヒスタミンなどの刺激物質が生成され、これらの物質が筋膜を刺激することで筋肉痛が出現すると考えられています。

    筋肉には痛みを感じる神経はなく、筋肉痛は筋膜が感じている痛みです。

    そのため、トレーニング直後より、数時間から翌日にかけて筋肉痛を強く感じるようになります。

    年齢・年代によって筋肉痛が起こりやすくなったりますか?

    よく年をとると筋肉痛が遅く出ると聞くことがありますが、医学的には根拠はありません。

    筋肉痛は筋繊維を修復する過程で起きる反応です。

    そのため、普段あまり運動をしない人は、筋繊維を修復したり、痛み物質を取り除いたりする代謝に時間がかかりますため、筋肉痛が3~4日後に出現します。

    若い世代の人は高齢者に比べて代謝は高いので、ほとんどの方が翌日に筋肉痛を感じると思います。

    普段から運動をしている高齢者であれば、筋肉痛が青年と同じタイミングで出現するという報告もあります。

    身体が冷えると筋肉痛が起こるのはなぜですか?

    筋肉痛とは筋繊維を損傷した際の修復での反応なので、体が冷えた時の筋肉の痛みと運動やトレーニングでの筋肉痛は別のものとなります。

    体が冷えると筋肉への血流が悪くなります。血流が悪くなると、酸素や栄養の循環が悪くなり、老廃物が溜まりやすい状態になります。

    この状態が続くと、筋肉が酸欠状態になりますので、痛みの物質が産生されます。(輪ゴムで指を締め付けている状態と考えて下さい。)

    この痛みの物質が産生されると、体は痛みを感じ、交感神経の緊張が強くなります。

    交感神経の緊張は血管を収縮するので、さらに血流が悪くなるという悪循環が起きてしまいます。

    また末梢血管が収縮すると、痛覚や触覚が敏感になり痛みをより感じやすくなります。

    人間は寒さによる冷えに抵抗するために、交感神経が優位になります。 この自律神経の作用で血管を収縮させ血液を内臓へ送ります。

     この時に、筋肉への血流が低下することにより血行不良が起こり、上記のように痛み物質が生成され、痛みを引き起こします。

    運動していないのに筋肉痛が起こることはありますか?

    筋肉痛とは運動や筋力トレーニングを行うことで、筋繊維が傷つき、それを修復する過程で出現します。

    なので、運動をしていないのに筋肉の痛が起きる場合は別の原因が考えられます。

    例えば、日常生活の中で、ぎっくり腰のように筋肉を肉離れした。寝違えのように寝ているうちに筋肉や関節が固まり、起床時の動きで関節や筋肉を損傷した場合が考えられます。

    また腱鞘炎のように、同じ動作の繰り返しで筋肉の付着部が炎症している場合もあります。

    筋肉痛が起こりやすい部位

    筋力トレーニングのように特定の筋肉を鍛える場合はどこの筋肉でも筋肉痛になります。

    ただし、腹横筋や肩の腱板のようなインナーマッスルは固有受容器が少ないので筋肉痛を感じることはなく、体感として『ちょっと張っているかな』程度です。

    王道的なトレーニングと筋肉痛が発生する部位の対応は下記の通りです。

    トレーニングメニュー筋肉痛が発生する部位
    腕立て伏せ・ベンチプレス大胸筋・上腕三頭筋
    懸垂広背筋
    スクワット大腿四頭筋・ハムストリング・大臀筋
    サイドレイズ三角筋
    アームカール上腕二頭筋

    特にスクワットはキングオブエクササイズ(筋トレの王様)と呼ばれています。上半身を鍛えたい場合でも、スクワットはどこかの日に取り入れたい種目です。

    日常生活の中で筋肉痛になる場合は、お子さんやお孫さんを抱っこし続けてると腕や肩、普段より多く歩いてふくらはぎやスネ、部屋の片づけをして背筋が筋肉痛になる事を臨床上、患者さんから良く聞きます。

    単なる筋肉痛であれば問題はありませんが、それが筋損傷(軽度な肉離れ)のようにケガになられる方も多く来院されます。

    痛みを感じたら自己判断せず、早めに受診して下さい。

    筋肉痛の治し方~早く治す方法はありますか?

    運動前にしっかりとウォーミングアップを行い、運動後はしっかりとストレッチを行ってください。

    運動前にストレッチをすると、筋肉が伸びた状態になり、筋力が発揮できず瞬発力が低下しパフォーマンスの低下に繋がりますので、運動前に入念にストレッチすることはお勧めしません。

    また激しい運動で筋肉や関節が熱を持っている場合は、アイシングを行って下さい。

    回復までに何日かかりますか?

    筋肉痛のピークは72時間です。多くが3日目をすぎると大分治まってきます。

    しかし、ボディビルのように同じ部位を何種目、何セットも追い込んだ筋トレの場合ですと、1週間かかる場合もあります。

    2週間以上、ずっと痛みがとれないのですが…

    肉離れを起こしている可能性あります。

    筋トレや運動で筋肉痛が起きる場合、筋線維の微小な損傷ですので2週間も続くことはありません。

    筋肉痛は、筋線維の微小な損傷ですが、肉離れは筋線維の断裂と損傷の範囲が広くなります。

    肉離れは受傷した際に、鋭い痛みを伴いますが、患者さんからすれば同じ筋肉の痛みですから区別がしにくいかもしれません。

    トレーニング中でも、無理な重量を扱い肉離れ(筋断裂)も起こす方もいますので、自己判断せずご相談下さい。

    筋肉痛がひどいときの対処法

    修復の過程で炎症が強い場合はアイスパック(氷嚢)で筋肉を冷やします。

    15分アイシングして1時間休憩、これを繰り返します。

    マッサージやストレッチ、湯船につかり、血流を改善し疲労物質を流します。

    しっかりと栄養をとる。普段の食事がバランス良くとれていれば問題はないと思いますが、特にビタミンB6はタンパク質の合成の際に働きます。

    B6だけを接種することは難しいですが、コンビニやドラックストアに販売されているドリンクで一時的に補うのがいいでしょう。

    筋肉痛が起きているときに運動してもいいですか?

    普段から筋トレや運動をしている方であれば問題はありません。

    最近、運動を始めた方で筋肉痛が辛くて、思うように動かせないという方は数日休んで筋肉痛が落ち着いてから再開してください。